近年、さまざまな事情により、テレワークを導入する企業が増えています。企業と社員の双方に多大なメリットがあるテレワークですが、成功させるには運用ルール作りが重要です。そこで本記事では、テレワークのルール制定が必要な理由や、ルールづくりのポイントについて解説します。
テレワークの導入を成功させるには、適切な「運用ルール」の制定が肝要!
テレワークを導入したものの、うまく運用できなかったり、メリットが感じられなかったりするケースは意外と少なくありません。さまざまな理由が考えられますが、ひとつには適切な運用ルールを定めていないことが挙げられます。
導入前に、まずはテレワークに対応した社内ルールを作成しよう
テレワークは、従来の働き方とさまざまな部分で大きく異なります。社員の働く場所はもちろん、業務連絡の方法や承認の受け方など、たくさんの違いがあるため、テレワークに即したルールを制定しなくてはなりません。
また、ルールは一度作成しておしまいではなく、アップデートが必要です。新たな働き方に対して社員も手探り状態であるため、運用しつつ状況に応じて課題の抽出・改善を繰り返す必要があります。
定めるべきルールは多岐にわたり、主に労働時間や評価方法、連絡方法、光熱費や通信費の負担などが挙げられます。労働時間に関しては、特に変更がなければルール化する必要はありません。
ただ、従来のオフィス勤務では不要であった、日報の送付などを求める場合は、その旨をルール化する必要があります。就業規則と照らし合わせ、これまでとは異なる働き方となる部分は、きちんとルール化を進めましょう。
社内のテレワーク運用ルールを作成するための必要手順
テレワークの導入にあたり、まずは労働時間や服務規程など、既存の規則の変更が必要かどうかを確認しましょう。そのうえで、ルールとして定めるべき項目を明確にします。
企業によっては、これまでの規則がほとんど合わないケースもあるでしょう。このような場合は、新たな勤務規定を作成するかどうか、作成するならどのような内容にすべきかなどを検討します。
勤務規定の作成や変更が終わり、就業規則に盛り込んだら、労働組合などに意見聴取を行います。意見を聞いたうえで、再度調整が必要なら行いましょう。最終決定したら従業員へ周知させ、所轄の労働基準監督署へ就業規則変更の届出を行ってください。
総務省のチェックリストや、公開されている既存のひな型を応用するのも◎
会社の就業規則は、何度も作り直すようなものではありません。そのため、多くの企業では初めての経験となることでしょう。「何をどのように定めればよいのかわからない」という経営者や担当者の方も少なくないと考えられます。
国土交通省や総務省では、HPにて「企業のためのテレワーク導入・運用ガイドブック」を公開しています。この中にはルール作りに役立つチェックリストもあるため、ぜひ活用してみましょう。
また、厚生労働省や日本テレワーク協会では、規則例のひな形を公開しています。詳しい解説も記載されているため、こちらもルール作りの参考になります。
「THE Telework GUIDEBOOK 企業のためのテレワーク導入・運用ガイドブック」
コツはある?テレワーク導入時に定めるべき項目例と、ルール作りのポイント
定めるべき項目は企業によりますが、一般的には実施範囲や人事評価制度、費用負担などについて定めます。また、勤怠管理方法やコミュニケーション方法に関するルールも必要です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
対象となる従業員は?「テレワークの実施範囲」
まずは、誰がテレワークの対象になるのかを明確にしなくてはなりません。「部署や業務内容で決める」「オフィスへの通勤が困難な人に限る」など、対象範囲を明確に定めましょう。
具体的かつ誰もが納得できるルールを定めることが重要です。でなければ、対象となる社員とそうでない社員とのあいだで、不公平感が広がってしまうかもしれません。
併せて、テレワークを行う場所についても定めておきましょう。ここを曖昧にしてしまうと、カフェや図書館など公の場で業務を行う社員が出てくるかもしれません。「業務は自宅のみ」「サテライトオフィスも可」などと明確にしたほうが、セキュリティ上安心です。
テレワークを行いたいときはどうする?「テレワークの申請と承認方法」
テレワークを行いたいとき、いつ誰に申請すればよいのかを定めます。ここをはっきりさせておかないと、社員が誰に申請すればよいのかわからず、現場の混乱を招いてしまうおそれがあります。
申請は本人が行うのか、それとも直属の上司が行うのか、誰にどのような手段で申請するのかを明確にしましょう。承認ルールも、条件を満たしていれば自動的に承認されるのか、面談を実施するのかといったことを決めます。
また、テレワーク中の社員を把握しやすい仕組みを作っておくのもおすすめです。状況を共有できるツールがあれば、社員の稼働状況を把握しやすくなります。併せて導入を検討してみるとよいでしょう。
テレワーカーや出社勤務者を公平に評価する「人事評価制度」
オフィスでの勤務と異なり、テレワーク環境下では社員の仕事ぶりを直接確認できません。そのため、従来とは異なる人事評価制度を導入する必要があります。
大切なのは、オフィス勤務とテレワーカーを公平に評価できる制度であることです。テレワーカーの多くは、仕事ぶりを上司に見てもらえないため、「正しく評価してもらえるのだろうか」と不安を抱いてしまいます。
このような状況にならないよう、明確なルール作りを進めましょう。おすすめなのは定量的評価です。達成率や成果物で評価を行う仕組みであるため、テレワーカーの働きを適切に評価できます。
働き方が見えづらいリモート勤務の「労務管理・勤怠管理方法」
オフィス勤務と違い、テレワーク環境下ではタイムカードを押したり、IDカードで勤怠を管理したりできません。始業・終業時刻や労働時間をどのように管理すべきか検討する必要があります。
人数が少ない場合は、メールや電話を用いた労務・勤怠管理が可能です。一方、テレワークを行う社員が大勢いる場合、この方法は現実的ではありません。このようなケースにおいては、勤怠管理ツールの導入をおすすめします。
誰でも使える操作性のよさを追及したものや、シンプルな設計を売りにしているものもあります。中には無料試用できるものもあるため、まずは試してみるとよいでしょう。
業務進捗状況の可視化およびスケジュール共有ができるツールであれば、より便利です。管理者が状況を把握しやすくなり、管理や評価も容易となるでしょう。目が行き届かないゆえに発生しやすいトラブルも回避できます
設備投資のコストは?「テレワークにかかる費用負担」
在宅で業務を遂行する場合、業務に必要な環境を整えなくてはなりません。インターネット環境の整備はもちろん、パソコンなどのデバイスやデスク、文具なども用意する必要があります。
最初から環境が整っていれば問題ありませんが、そうでないのならある程度の費用が発生します。これらの費用をすべて社員に負担させると、当然ながら社員の反感を買ってしまうでしょう。
ほかにも、在宅勤務となれば通信費や水道光熱費なども発生します。これらの費用を会社が負担するのか、それとも双方で負担するのかを決める必要があります。双方で負担する場合は、どのような割合にするのかも明確にしておきましょう。
従業員のメンタルケアにもつながる「コミュニケーション方法」
テレワークを始めたばかりの方は、孤独感や疎外感を抱きがちです。気軽に同僚や先輩に相談や雑談ができず、メンタルに支障をきたしてしまうおそれもあります。
オフィス勤務のように社員同士が顔を合わせないため、意思の疎通がしにくい問題も生じます。メールでやり取りするにしても、人によってレスポンスの速さに違いがあるため、ストレスを感じる方がいるかもしれません。
そこでおすすめなのが、コミュニケーションツールの導入です。離れた場所でも通話やチャットなどでリアルタイムにやり取りできるため、社員のメンタルケアに限らず、さまざまな面でテレワークに役立ちます。
コミュニケーションツールを導入する際は、「定期的にオンライン会議を行う」「1日1回はチャットでやり取りする」など、コミュニケーションに関するルールを定めておきましょう。
【事例公開】テレワーク勤務の指針となる、従業員向けガイドラインを制定するのもおすすめ
スムーズにテレワークを導入するため、社員向けのガイドラインを作成するのもおすすめです。初めてのテレワークとなれば、不安や戸惑いもあるはずです。それらを解消するためにも、ガイドラインの作成を検討してみましょう。
とはいえ、ガイドラインを一から作成するのは大変です。そこで、ここでは参考になるガイドラインのひな形として、プラザクリエイトの「リモートワークと出社勤務を併用したハイブリッド体制のためのガイドライン」をご紹介します。
こちらは、同社が実際に体制の移行に伴い作成した、社員向けのガイドラインです。オンライン会議の設定やコミュニケーションツールの使い方、勤務場所、セキュリティ対策、自己管理など、テレワークにおいて留意すべきポイントが詳細に押さえられています。
そのままでは使えない可能性もあるため、自社にマッチするようサンプルを適宜カスタマイズしてみてはいかがでしょうか。ひな形を参考にされたい方は、下記URLをご覧ください。
「リモートワークと出社勤務を併用したハイブリッド体制のためのガイドライン」
「運用ルール」を明確にしてテレワークを成功させよう
テレワークは従来の働き方と大きく異なるため、導入に際して少なからず現場の混乱が予想されます。事前のルール作りは、就業環境の変化に戸惑う社員の不安を解消し、テレワークの導入・運用を円滑化します。テレワークの導入で失敗しないよう、総務省などで公開されているチェックリストも活用して、明確なルールを制定しましょう。
また、ルール作りにおいては実施範囲や申請・承認方法、勤怠管理、コミュニケーション方法なども定める必要があります。企業により変わってくる部分もありますので、最後にご紹介した社員向けガイドラインのひな形も参考にしつつ、自社に合ったガイドラインを作成してください。