2022年に実施された総務に関する調査によると、コロナ禍により「総務の仕事量が増えた」と回答した人が6割以上にのぼりました。また、別の調査では「総務体制に求めること」として「デジタルツールを導入してほしい」が1位となっています。
人事を含む、事務関連の業務を一手に引き受ける総務部。その業務は煩雑で、多くの人員と時間が必要です。この課題を解決するのが、今回ご紹介する「人事管理システム」。システムを導入することにより、工数削減になるだけでなく、生み出された時間で戦略総務にシフトすることもできます。
今回はこの人事管理システムについて、主な機能や導入メリット、おすすめシステム5選。そして先ほどご紹介した、近年の総務の負担増についても詳しくご紹介します。
コロナ禍で総務の負担は増えている
人事管理システムについてご紹介する前に、まずは人事を含む事務全般を担う「総務部」の仕事について深掘りしてみたいと思います。
約6割が「仕事量が増えた」
コロナ禍が始まって以降、総務部の負担増加が懸念されています。総務専門誌「月刊総務」の調査「総務の仕事に関する調査(2022年)」を見てみましょう。
「新型コロナによって総務の仕事量に変化はありましたか」という問いに対し「仕事量が増えた」と回答した人は全体の62.8%にものぼりました。また「総務の仕事内容に変化はありましたか」という問いに対しては「これまでにない対応が発生した」と回答した人が78.8%と、約8割を占める結果となっています。
月刊総務の別の調査「総務の2020年度の振り返りと2021年度の展望に関する調査」を見てみると、コロナ禍で「特に増えた仕事の内容」としては、
◎テレワークを実施するための施策
◎zoom会議用のスケジュール調整
◎電話や口頭で済ませていたことがメールになったため時間を要する
◎コロナ対策関連のルール決め、周知
◎緊急事態宣言に伴う勤務時間変更と労務管理
◎一時休業に伴う雇用調整助成金の申請
が挙げられています。コロナ禍で働き方が変化したことによる負荷の多くが、総務に降りかかっていることが分かります。
総務が望んでいること
このような状況の中、総務は会社に対してどのようなことを望んでいるのでしょうか。先出の「総務の2020年度の振り返りと2021年度の展望に関する調査」では「2021年の総務体制に求めること」として、
◎デジタルツールを導入してほしい…44.6%
◎人員を補充してほしい…30.9%
◎総務もテレワークできるようにしてほしい…23.0%
という項目が上位となりました。
デジタルツールの導入がうまくいけば、人間が行う作業は圧倒的に削減され、2位の「人員の補充」だけでなく、3位の「総務もテレワーク」の実現にも繋がる可能性があります。
私自身、今年に入ってから「人事管理システム」を導入した総務担当者にお話をお聞きする機会が増えました。特に多いのが「これまで紙やExcelで管理していたけれど、ツールの導入により、クラウドでデータを一括管理できるようになり、煩雑な作業から解放された。」「生まれた時間を、採用などのコア業務に割くことができた。」という声。いわゆる「戦略総務」に注力できたという事例が、増えてきています。
それでは、実際に「人事管理システム」ではどのようなことができるのか、詳しく見ていきましょう。
【出典】
総務の仕事に関する調査/月刊総務
総務の2020年度の振り返りと2021年度の展望に関する調査/月刊総務
人事管理システムとは何か
そもそも、人事管理システムとは、社員の基本情報・入退社・評価・給与など、社員にまつわるあらゆる情報を蓄積し、管理・分析するものです。
人事管理システムが有する機能や、導入メリットについても見ていきましょう。
人事管理システムの主な機能
システムによって、保有している機能はさまざまですが、基本的には以下のような機能が備わっています。
◎人事情報管理
◎勤怠管理
◎給与管理
◎労務管理
◎採用管理
◎人事評価/タレントマネジメント
また、機能がオールインワンのタイプ、オプション型のタイプ。導入形態がオンプレミス型、クラウド型など、その種類はさまざまです。導入を検討する前に、自社の導入目的は何なのか、また既に導入しているシステムの有無、そのシステムとの連携が必要か…など、あらゆる要素から検討・整理しておく必要があります。
人事管理システムの導入メリット
人事管理システムの導入メリットとして、以下の点が挙げられます。
◎総務の業務効率化
◎チェック業務/人的ミスなど煩雑な作業からの解放
◎適切な人事評価の実施/適材適所な人材配置
◎社内での人事情報共有がスムーズに
やはり、業務負担の軽減が最も大きなメリットであると言えます。単純にツールに置き換えたというだけでなく、人間が介在することで起きていた人為的ミスや、それを防ぐためのチェック作業なども不要となります。それによって生まれた時間で、採用や人事などコア業務に集中することができるのです。
また、情報が一つのシステムに集まることで、総務だけでなく、各部署のリーダーや経営層にも評価をはじめとした確かな人事情報がリアルタイムで共有できます。情報が集まれば、それを元に人材や組織について分析し、スピーディーかつ正確な人材配置にも繋がります。結果、組織の生産性の向上にも影響するでしょう。
おすすめの人事管理システム5選
それでは、実際のシステムについてご紹介します。
COMPANY
【ポイント】
◎大企業向けの総合型人事システム
◎日本の商慣習を深く理解し、個社の細かな要件にも対応
◎人事給与業務ERPシェアNO.1
※2020年度ERP市場 人事・給与業務分野:ベンダー別売上金額シェア 出典:ITR「ITR Market View:ERP市場2022」
【詳細】
COMPANYは、これまで大手法人グループ約1,200社に導入され、多くの企業に支持されているシステムです。社員の入社から退社までの人事・労務に関するすべてを網羅した「総合人事システム」。具体的には、人事管理・勤怠管理・給与計算・人材開発・要因分析・雇用手続管理・ID管理などそのカバー領域は多岐に亘ります。
日本の商慣習を深く理解した上で開発されたシステムでありながら、個社の細かい要件にも対応。人事制度の変更、運用方法の変更、組織改変などの場合でも、柔軟に用意された標準機能から選択し、スピーディーに対応できます。
約1,200件の大手法人の人事業務ノウハウを吸収しており、制度設計のコンサルティングから請け負うことができます。また、「COMPANYユーザー会」として、ユーザー同士の横の繋がりを持つことも可能。意見交換や情報収集の場も提供しています。
【料金】
要見積もり
【URL】
https://www.works-hi.co.jp/products
クラウド人事労務ソフトSmartHR
【ポイント】
◎登録社数50,000社以上、多様な業界で使われるシステム
◎クラウド型人事労務システム満足度NO.1(株式会社マクロミル委託調査)
◎人事・労務の業務効率化、人材マネジメントどちらも実現できる
【詳細】
SmartHRでは「業務効率化」「データの一元管理」「組織改善」のすべてを網羅しています。特に業務効率化については、ペーパーレス化を実現することで、合計工数を約88%削減できると試算しています。
また、入社・人事評価・年末調整・身上変更など、さまざまなタイミングで従業員データがクラウド上に蓄積。そのデータを可視化し、簡単に分析することが可能です。その結果から、組織課題などを抽出することもでき、結果的に効率的な人材マネジメントが実現できます。
40以上の外部サービスとも連携しており、1クリックで従業員情報の連携も完了。ユーザーコミュニティもあり、人事・労務担当者同士の情報交換もできます。
【料金】
要見積もり
【URL】
https://smarthr.jp
人事クラウドシステムHR-Platform
【ポイント】
◎カスタマイズ性の高いシステム
◎企業に合わせたオーダーメイドなシステム構築
◎継続的な活用支援でパートナー的存在に
【詳細】
同社のシステムは非常にカスタマイズ性が高く、どのような人事情報でもデータベース化が可能となります。また、現行の申請プロセスをそのままワークフローに変換することができるため、社員に負担をかけることもありません。
同社はシステム提供だけでなく、人事・労務の運用を丸ごと引き受ける「人事アウトソーサー」を掲げています。企業課題を理解し、その課題解決のために伴走する長期的なパートナーとなってくれます。実際に導入した企業からは「社外に、もう一人社員がいるような安心感」というコメントが寄せられています
【料金】
要見積もり
【URL】
https://www.fosterlink.co.jp/service-list/employee-profile-application-workflow/
カオナビ
【ポイント】
◎スキル・人事評価・面談履歴など「人事」に特化したシステム
◎導入企業社数約2,500社(2022年3月現在)以上
◎「活用できるまで」専任担当が伴走
【詳細】
カオナビでは、人材情報の一元化、業務効率化だけでなく、それらのデータを活用した経営の意思決定支援や、採用のミスマッチの防止などにも役立ちます。
具体的な機能は、人材データベース、組織図の自動生成、社員データグラフ作成、配置シミュレーションなど、シンプルでありながら人材管理に必要な機能が揃っています。その他にも、優秀な社員の抽出、モチベーション管理、社員アンケートの設計・収集など、一歩踏み込んだタレントマネジメントに役立つ機能も搭載。
また、システムの提供だけでなく、継続的に手厚いサポートが受けられることも特徴の一つ。引き継ぎマニュアルの作成も委託でき、社内で「活用できるまで」専任の担当者がしっかり伴走してくれます。
【料金】
データベースプラン/パフォーマンスプラン/ストラテジープラン
複数のプランあり 要見積もり
【URL】
https://www.kaonavi.jp
freee人事労務
【ポイント】
◎労務の人的なミスを「ゼロ」にするシステム
◎国内シェアNo.1のAWSを活用し、大切な情報を厳重管理
◎クラウド会計ソフトシェアNo.1の「freee」の関連システム
※シミラーウェブ、ローカルフォリオ/2019年10月
【詳細】
クラウド会計ソフト大手「freee」の人事労務ソフト。金融機関レベルのセキュリティで、漏洩が許されない大切な情報を厳重に管理できます。
「労務の人的なミスをゼロへ」を掲げ、例えば従業員なら打刻・入社手続き・身上変更などを一気通貫でIT化。また、「紙」をゼロにすることで、紙の管理・封入作業などを無くし、紛失や手間も省きます。さらに、アラート機能を活用することで、今月やるべきことを可視化でき、イレギュラー対応でも通知が届くため抜け漏れがありません。
導入時に、既存業務の見直しから相談できる「導入アドバイザリー」や、チャットや電話で気軽に相談できるサポートデスク、そしてWebマニュアルやセミナーなど、導入後のサポートも充実しています。
【料金】
初期費用0円 1,980円/月〜
従業員の人数とプランにより変動
【URL】
https://www.freee.co.jp/hr/
総務は「なんでも屋」「雑用係」ではない IT化で戦略総務へ
いかがでしたか?今回の調査結果を見て、コロナ禍で総務の負担がここまで増加していることに驚きました。また、先出の調査結果では、社内で総務は「なんでも屋」「雑用係」と思われていると回答した人が、いずれも7割を超えており、総務の役割が社内に理解されていない現状が浮き彫りとなりました。
まずは、ITツールを導入することにより、総務の業務負担を大幅に軽減すること。そして、その生まれた時間を活用して「戦略総務」を実現すること。それにより、これらの課題は大きく解決に向かうのではないか、と思いました。
私も会社員時代、分からないことはとりあえず「総務に聞け」という姿勢でした。時には、簡単なデザイン業務までお願いすることも…。改めて、反省の思いを強くしているところです。
この記事を書いたひと
三神早耶(みかみさや)
大学卒業後、広告代理店に入社。企画営業と制作進行管理を兼務。その後、出版社でコンサルティング営業、国立大学でeラーニングツールの運営や広報サポートなどを担当し、2016年よりフリーライターに。経営者向けウェブメディア等で、経営者インタビュー、組織改革、DXなどについて取材・執筆。