コロナ禍でのテレワークを実施している企業では、コミュニケーション環境の悪さにより、従業員のストレスの恒常化が問題となっています。
それを解決するのが、オンライン上で仲間と同じ空間を共有する「仮想オフィス」です。
ここでは仮想オフィスの機能、導入事例、主要なクラウドサービスなどを紹介します。
「仮想オフィス(バーチャルオフィス)」とは?テレワークが定着する今、注目される理由
新型コロナウイルスが猛威を振るい、出社もままならない状態で、やむを得ずテレワークを実施している企業が増えています。
さまざまな企業で「Zoom」や「Microsoft Teams」のようなWeb会議ツールの導入が進んでおり、チームの抱えるジョブを割り振ったり、進捗を確認したりと業務の円滑化に注力しています。
しかし、テレワークの導入後、社員間のコミュニケーションが減少したことで新たな課題が生まれています。
在宅勤務の環境に慣れず生産性が低下したり、雑談が減って孤独に感じたりなど、ストレスを感じている社員が増えています。また、「仕事と私生活のメリハリがなくなる」「気分転換が難しくなる」「モチベーションが低下する」「成果を出さなければならないという思いに駆られる」といったことも、ストレスを感じる原因として挙げられています。
現在、このような課題を解決するために「仮想オフィス」が注目されています。どのような効果が期待されるのか、詳しく解説していきます。
テレワークによるストレスを解消するポイントは「雑談」にある
株式会社リクルートキャリアが昨年9月に実施したアンケートによる調査レポートで、以下の点が指摘されています。
テレワークの定着に伴うストレスの恒常化
下記2点のような実態報告と、全世代から捉えられるストレスの恒常化が、今後の企業功績や職場の覇気に悪影響を及ぼします。
・テレワーク経験者の約6割が、以前にはなかった仕事上のストレスを感じている。
・未だにストレスが解消されていない者が該当者の約7割を占め、年齢が上がるほど多くなり、50~60歳代では84%弱である。
対面によって形成されていたコミュニケーションや協働がテレワークによって分断された結果、上司や同僚からのフィードバックが受けにくくなったり、仕事の全体像の把握や重要性の実感ができなくなったりしたことで、モチベーションが低下したといわれています。
雑談にはストレス解消の効果がある
テレワーク中の雑談とストレス解消の相関関係も調査されており、雑談は心理的な距離を近づける効用があり、ストレス解消に一定の効果があると報告されています。
また、雑談には「会議には至らないちょっとした業務上の会話」と「業務外の話や世間話」の両方が含まれており、職場内の人間関係を構築し、円滑に仕事を進める役割もあります。
適度に雑談の機会を設けることで、社員の孤独感やモチベーション低下といった精神的負担を軽減し、生産性を高めることが大切です。
オンライン上で仲間と同じ空間を共有できる仮想オフィス(バーチャルオフィス)サービス
ZoomやMicrosoft Teamsの導入でWeb会議が普及したのと同時に、もう一歩進めて雑談も同じく定着することで、実際にオフィスに出社している状態と変わらずに仕事を行うことはできないでしょうか。
このようなニーズに応えるのが、仮想オフィスのクラウドサービスで、「オフィスに出社している感覚で仕事をする」環境を提供するものです。
常時接続しているので、誰が何をしているかひと目でわかる仕組みを備えています。実際のオフィスに近い感覚で同僚と対話したり、交わされている会話を耳にしたりすることが可能です。
なお、ここで紹介する仮想オフィスサービスは、テレワーク主体でオフィスを持たない会社などへ住所を貸し出す「バーチャルオフィス」のサービスとは異なりますので、混同しないように注意してください。
仮想オフィスツールで最も特徴的なのは、「同僚と一緒にオフィスにいる」感覚を味わえる機能で、「座席・ルーム設定機能」と称されています。 また、雑談などのコミュニケーションが気軽にできる機能もあります。この際、画面や資料を共有できれば、業務や会話が円滑に進むでしょう。 どこで誰が何をしているのか、誰が会議中なのかなどの状況を把握でき、「従業員が頑張って仕事をしている姿を上司や同僚らが認め合う」効果も期待できます。 また、相手が在席中や離席中、休憩中などであることがわかれば、「ちょっとした会話」をするタイミングを掴みやすくなります。 ・座席機能:「在席中」「離席中」「休憩中」のステータスをリアルタイムで表示します。手動で設定するタイプと、自動検出して設定するタイプがあります。そのほかに、定期的にWebカメラで撮影した静止画をステータス代わりに表示するものもあります。 バーチャルオフィスには、「チャット」「ビデオチャット」「音声チャット」の機能があります。ちょっとした声かけや質問、雑談など状況に応じて使い分けるとよいでしょう。 言葉では説明しがたい写真や図面、資料などはパソコン画面に表示すれば一目瞭然です。ちょっと見てほしいものやちょっと確認してほしい案件などがあるときも、タイムリーに簡単に済ますことができます。 テレワークを実施している企業が仮想オフィスを導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。これまで解説した内容の延長でさらに期待できることと、仮想オフィスを導入してみて実際どうだったのかを、以下で見ていきましょう。 株式会社スマートゲートは、コンテンツメーカーから仕入れたコンテンツをカスタマイズして商品化する事業と、紙の書籍を電子書籍化したり紙のカタログを電子カタログに変換したりする事業を展開する会社です。 コミュニケーションを重視する企業文化をもち、アルバイト11名を含め従業員は21名います。コロナ禍をきっかけに全社員がリモートワークになりました。 その際、Web会議を繋ぎっぱなしにすることと「仮想オフィス」を比較し、プライベート空間に踏み込みすぎずに自宅で作業できる点を重視して、仮想オフィス「Remotty」を導入することになりました。 利用するにあたり、毎日必ず起動して「おはよう」「休憩入ります」「お疲れさまでした」の3つの挨拶をするルールを定めています。 Remottyを使ったコミュニケーションで、「同じ空間に仲間がいる」感覚が得られることが、とても重要だということです。 株式会社アジャイルウェアは、アジャイル開発によってシステムを構築したり、プロジェクト管理ツール「Lychee Redmine」や記事録共有サービス「GIJI」を開発し、クラウドサービスとして提供したりしているシステム開発会社です。 仮想オフィスを始めるきっかけは、次のような悩みを解決するためでした。 同社では「Remo」を活用して仮想オフィスを構築しました。Remoは小部屋に仕切られたオフィス全体を表示できるのが特徴です。以下の3点が可能だったことから、Remoを選択しました。 仮想オフィスを開始後、相手の状況がわかるようになったので、話しかけやすくなりました。相手の都合を聞くやり取りがなくなったことで、テキスト文のやり取りが25%も削減できました。 この章で仮想オフィスツールの特徴を、次章で詳細を説明します。なお、ここでは紹介しないですが、米国のWalkabout Workplaceの製品を日立ソリューションズが販売することを2020年7月に発表しています。 料金:無料。大人数利用や付加機能が利用できる有料版も提供予定 「リアルより気軽に話しかけられるオンラインワークスペース」をコンセプトにした仮想オフィスです。無料で提供されていますが、将来的には大人数で利用したり、付加機能を利用したりする場合は、有料版も提供される予定です。 ユーザーを登録すると、ひとつのワークスペースが登録可能になります。ワークスペースはひとつのオフィスと考えればよいでしょう。 ワークスペースには、業務をする部屋や会議室などのルームを複数用意でき、チームやプロジェクトごとに異なったルームを使用します。 ワークスペースができたら、一緒に使うメンバーを招待します。招待を受けたユーザーは、招待リンク先にアクセスして新規登録すれば、そのワークスペースに参加できます。 参加者はアバターで表示され、さらには話しかけてもよいかどうかも色で表示されるので、気軽に雑談やちょっとした会話をすることが可能です。 他の参加者のアバターをクリックするだけで、その参加者とのマンツーマンで音声会話をスタートできます。それ以外に、会議室の中の様子を外から立ち聞きしたり、会議に途中から加わったりすることもできます。 料金:ユーザーが10名の場合、月額2万円。10名ずつ増えると2万円ずつUP 心理的安全性の構築をコンセプトにした製品です。誰もが不安を感じることなく、思ったことを自由に発言し、行動に移せる環境の構築を目指すものです。 このために、「雑談」「挨拶」「軽い声かけ」など、実際のオフィスでは意識しないような、何気ないコミュニケーションをWeb上で実現しています。 具体的には、実際のオフィスで行われているコミュニケーションを、同期的・非同期的のいずれの要素が強いか、コミュニケーションの内容がオープン・クローズドのいずれの要素が強いかによって、次の4パターンに分類しています。 この4パターンに対応するデジタルのソリューションを提供しています。 ・顔が見える:PCのカメラで、2分間隔で自動撮影され、仲間と共有し合えます。写真を見て相手が今、何をしているかわかるので、オフィスにいるような感覚で声かけができます。 2020年12月に日本法人リモ・ジャパン株式会社が設立され、日本での事業展開を本格的に進めています。元は英語でしたが、2021年2月に日本語のβ版がリリースされました。 料金:ベーシックプランは人数無制限で月額10ドル(約1,086円)、プレミアムプランは人数無制限で月額15ドル(約1,629円) オンラインのイベント会場の見取り図が表示され、参加者全員に向けて行うウェビナーやカンファレンスを開いたり、参加者がテーブル単位でグループに分かれて交流したりする場が用意されています。 イベント会場のレイアウトなどのカスタマイズ機能は豊富にあり、ユーザーインターフェースは直感的にできています。 企業のリモートワーク用に「バーチャルオフィス」というサービスがあります。オフィスは複数のルームに区切られ、各ルームにはテーブルが置かれています。 そのテーブルには、参加者の顔写真が付いたアバターが配置されています。会話は音声で行われ、話し手の顔写真も画面上部に表示されます。 「チャットより豊かに、Web会議より素早く」をコンセプトに、「声のバーチャルオフィス」を掲げて、会話のしやすさにこだわった製品です。 【Start】 【Team】 【Organization】 チャットやメールは手軽だが、微妙なニュアンスを伝えにくい・読み取るのが難しい場合がある、Web会議ツールは便利だけど、予定を調整したり機器を準備したりする手間がかかる、Web会議をするほどの話ではないが「今すぐ話したい」というニーズには向かない、などの不便の解消を目指しています。 ・実際のオフィスのように、事務室や会議室などのルームを作ることが可能です。同じチームのメンバーは同じルームに配置されます。 また、取り組んでいる仕事などを第三者に知ってほしい情報をテキストで表示する「ひとこと共有」機能も付いています。 ・ボイスチャット機能:キーボードのキーを押すだけで、同じルーム内の人と音声による会話が可能です。 テレワークの定着に伴い、従業員のストレスが恒常化し、企業功績や職場の覇気への悪影響が指摘されています。また、ストレス解消の鍵は雑談の量であることも判明しています。 「Web会議室システムを使うほどではないが、ちょっとした打ち合わせがやりづらい」や「頑張って仕事をしている姿を上司や同僚らと認め合うことができない」「仕事と私生活のメリハリがない」ことなどが、仕事に対するモチベーションを下げています。 これらの問題解決に向けたソリューションとして、仮想オフィスのクラウドサービスが注目されています。仮想オフィスの機能やメリット、導入事例、代表的なクラウドサービスを参考に、コミュニケーションの改善を試みてください。 座席・ルーム設定機能
・部屋機能:仮想オフィスにアバターを配置して使用します。 コミュニケーション機能
画面・資料共有機能
企業における仮想オフィスの導入メリットと、実際の活用事例
【活用事例①】コミュニケーションを重視する文化の企業が、完全リモート化に向けて仮想オフィスツールを活用した事例(株式会社スマートゲート)
【活用事例②】仮想オフィスの導入により、音声コミュニケーションが活発化し、テキストによる不要なやり取りを削減できた事例(株式会社アジャイルウェア)
・話したい相手の会議が終わるタイミングがわからない
・誰と誰が何についてミーティングをしているのか把握できない
・集中して作業しているかもしれない相手に声をかけづらい
・ちょっと話すだけなのにわざわざチャットを立ち上げるのが面倒
・いつ誰がどこで会議しているのかがひと目でわかる
・各従業員の「稼働中」「離席中」「集中タイム(話しかけないで)」などを設定できる
・気軽にweb会議を始められるテレワークを導入するなら使いたい、おすすめの仮想オフィスツール4選
無料で利用できる「NeWork(NTTコミュニケーションズ)」
特徴:音声による会話 使用方法
概略機能
既存のチャットツールやWeb会議ツールと連携が可能な「Remotty(ソニックガーデン)」
特徴:テキストによる会話(チャット)。オフィスで会話を4パターンに分類し、それぞれに適したソリューションを提供 概略機能
・会議室や電話:議論や指示、承認、提案などは同期的でクローズド性が強い
・オフィスのデスク:挨拶や声かけ、雑談、つぶやきなどは同期的でオープン性が強い
・レポート・文書:報告や連絡、通達などは非同期的でクローズド性が強い
・掲示板・ホワイトボード:掲示や募集などは非同期的でオープン性が強い
相談はどちらかというと、同期的だがクローズド性の強弱は内容によります。 個別機能
・チャットで会話:実際のオフィスのように各自の席があり、そこでチャットによる会話が可能です。全員のチャット内容が画面のチャット欄に流れ、誰でも見れるようになっています。また、仲間にチャットの閲覧を促す機能もあり、特定の人に呼びかけたい場合や全員に見てもらいたい場合などに利用します。促さない場合は単なる独り言になります。
・会議室:外部のテレビ会議ツールと連携すれば、数十人が入れる会議室を利用できます。
・カレンダー:GoogleカレンダーやOffice365、iCalendarとの連携が可能です。相手の予定がわかれば、より連絡が取りやすくなるでしょう。
・入退室ログ:Remottyへのアクセス開始時刻とアクセス終了時刻から勤怠管理ができます。日本語UIの提供が開始され、ますます便利に!「Remo(リモ・ジャパン)」
概略機能
特徴:音声による会話ができるリモート・イベントツール。「バーチャルオフィス」というサービスを利用した場合が該当あえてカメラはオフ!常駐型のデスクトップアプリ「roundz(ラウンズ)」
・月額:5,500円/ワークスペース
・最大利用人数:20名まで
・部屋数:無制限
・月額:22,000円/ワークスペース
・最大利用人数:50名まで
・部屋数:無制限
・月額:55,000円/ワークスペース
・最大利用人数:150名まで
・部屋数:無制限 主要機能
・アバターには顔写真が表示されるうえに、声かけの可否も色で表示されます。さらには、PCの利用状況やカレンダーから自動でステータスが表示されるほか、「取り込み中」の手動設定もできます。
・画面共有機能:ワンクリックで画面とマウスの共有ができるので、画面を見ながら「ここ」「それ」のような言葉で伝えられます。
・カメラなし:髪型や服装などを気にせずに、急な声かけに対応できるよう、あえてカメラを使っていません。従業員同士の繋がりの場を用意しよう