「ペーパーレス化」で得られる効果とは?推進すべき理由と進め方のコツ

テレワーク,働き方

最近ではテレワークが普及し始めた影響などもあり、ペーパーレス化を推進する企業が増加してきています。本記事ではペーパーレス化の導入を検討している方に向けて、推進すべき理由や実際の効果などについて解説しています。これから導入しようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

そもそもペーパーレス化とは?

ペーパーレス化とは、紙の資料をできる限り電子化するという意味です。2015年4月に施行されたe-文書法により、保管義務のある書類や請求書、領収書などをデジタル形式で保存することが認められるようになりました。

最近ではテレワークの普及や自然保全、経費カット、業務の効率を向上させるなどの目的でペーパーレス化を進める企業も増えてきています。しかし、日本にはハンコ文化をはじめ、紙の資料を使う習慣が根強く残っているせいか、電子データへの移行はあまり順調に進んでいるとはいえません。

しかし、ペーパーレス化を適切に進める事ができた場合は、企業や従業員にとって大きなメリットとなります。大企業も積極的に取り組んでいる課題であり、習慣を断ち切ってでも導入するほど重要性が高く、大きな見返りがある施策であるといえるでしょう。

メリット大!いま、企業がペーパーレス化を推進すべき理由と得られる効果

ペーパーレス化を進めることで、企業はどのような恩恵を受けることができるのでしょうか。ここからは、紙から電子データに移行を進める企業が増えている理由とその効果について解説します。

テレワークなど、場所に捉われない新しい働き方の生産性を上げるペーパーレス化

紙から電子データに移行した場合のメリットとして、「業務の効率化」、「コストカット」、「リスク軽減」の三つが挙げられます。

紙媒体を廃止することで業務が最適化され、結果的に生産性が向上します。また、紙の使用をできるだけ廃止することで、用紙などのコストを削減できます。そして、紙からデジタル形式になることで情報のセキュリティを高めることができ、情報漏洩に強い体制に移行することが可能です。

特に最近はテレワークが急速拡大しています。業務のデジタル化を進め、紙媒体に頼らない仕組みを作ることで、新しい働き方にも柔軟に対応できるようになるでしょう。

【業務効率化】情報の検索や保管が容易になり、リモート勤務による無駄も省ける

紙資料をデジタル形式に移行すると、書類の分類・整理をする手間が省けるなど、情報を管理しやすくなります。データ化した情報は検索によってすぐに取り出せるため、目的の情報を簡単に探すことができます。また、紙からデジタルに移行すると、オンライン環境さえあれば場所を選ばずに資料を確認できるのです。

新型コロナウイルスの影響なども後押しし、テレワークが急速に普及している今の時代、場所を選ばずに書類を参照できる労働環境を構築することは生産性の向上に繋がります。ペーパーレス化の推進と並行して電子決裁システムも導入すれば、社員がハンコをもらうためだけに出社するといったムダな労力や時間を減らすことも可能です。

【コスト削減】印刷や書類の管理にかかる費用を減らせる

紙媒体の書類はプリントするたびに紙が消費され、コストがかかります。紙以外にも印刷代、郵送代、機器本体代などの費用が発生するほか、保管場所や破棄などの管理コストも必要です。しかし、紙の使用を廃止することでこれらのコストを大きく削減できます。

費用がおさえられるだけでなく、紙を使わなくなれば保管場所が不要になるため、オフィスのスペースを広く使うことができます。可能な限り電子化を進めてしまえば、紙での保存が必要な重要書類のみ保管すればよいため、資料を保存するために広い空間を用意する必要がなくなるのです。

【リスク低減】資料の紛失や劣化、情報漏洩などのリスクを低減できる

紙媒体の書類を中心に運用する場合は、紛失や劣化、災害などのリスクに備える必要があります。書類を社外に持ち出した場合は、もし紛失すれば情報漏洩の危険性にさらされます。

また、紙媒体の資料は災害の影響を受ける可能性も考えられます。このように、紙媒体は常に消失のリスクが付きまといますが、デジタル形式に移行していればバックアップを簡単に取れるため、災害などでデータを紛失してもすぐに取り戻せます。

また、デジタル形式ならそのままメールなどで受け渡しできるため、持ち出しによる情報漏洩リスクの軽減も可能です。データ化した情報は個人単位での閲覧制限をかけることもでき、必要な人だけに情報を見せるコントロールも簡単に行えます。情報のリスクマネジメントという観点から見ても、デジタル化を進める効果は大きいといえるでしょう。

デメリットはある?ペーパーレス化を進める上で知っておきたい課題

多くのメリットが得られるペーパーレス化ですが、導入することで発生するデメリットはあるのでしょうか。ここからは、紙資料を電子データに置き換える際に課題となる部分について解説します。

メリットを享受するためには、従業員全員のITリテラシー教育が必須

デジタル形式への移行によるメリットを最大限享受するには、従業員全体のITリテラシー教育が欠かせません。ITにどれだけ精通しているかは人それぞれで、従業員のだれもが機器やデータ化された情報を使いこなせるとは限らないからです。

書類のデジタル化を行うと、パソコンやタブレットなどの電子機器から情報を見ることになります。ITに不慣れな従業員だと、機器を使いこなせず不便に感じるケースも少なくありません。慣れてないものは当然上手く使えないため、仕事の効率が落ちてしまう可能性があるのです。

例えば、ITに不慣れな従業員同士でデータを共有しようとすると、従来の形式よりも時間がかかってしまいます。ほかには、紙と端末とでは資料の見やすさが異なるため、内容の確認に時間がかかるケースも考えられます。セキュリティの面でいえば、テレワークなどで電子機器を社外に持ち出したとき、セキュリティ対策が不完全で情報漏洩が起きる可能性も考えられるでしょう。

ペーパーレス化の効果は、従業員の高いITリテラシーがあって初めて実感できるものです。そのため業務の効率化やリスク軽減の効果を得るためには、端末の使い方、セキュリティ、データの適切な保管方法などのITリテラシー教育が必須になります。

導入にはまとまった費用がかかる

ペーパーレス化を進める際には、まとまった費用が必要です。データを閲覧するためのタブレットやパソコンが必要になるほか、大容量クラウドやサーバーなど、データ保管のための利用料が発生します。

さらに、今までの紙書類をデータにしたい場合は、紙の資料をデータとして取り込むスキャナーも用意しなければなりません。書類が膨大にある場合は、取り込みにも多大な時間が必要になるでしょう。

導入が一度実現すれば、用紙やトナー、プリンターのリース代、書類の管理費など様々なコストをカットできます。しかし、導入するのに大きなコストがかかる点が、導入が進まない大きな要因になっているのです。

機器の故障など、不測の事態へ備える必要がある

デジタル形式の書類を扱う場合は、システム障害の影響を受けやすくなる点にも注意する必要があります。IT関係のトラブルとしてよくあるのが、システム障害でデータが一時的に参照できなくなることです。データを見られない間は全員の業務が停止してしまうなど、大きな損失が発生するケースも考えられます。

サーバーに障害が起きた場合は、データが消失する恐れもあります。紙書類のように劣化や破損の心配はありませんが、データ消失が起きないように常にバックアップを作成したり、複数の保管場所を確保したりするなどの対策が不可欠です。

ペーパーレス化の進め方と、企業における成功事例

ここからは、紙資料からデジタル形式へ移行するときの手順や、導入を行った企業の成功事例を二つ紹介します。

ペーパーレス化成功のポイントは「段階的な実施」

組織全体にペーパーレス化の取り組みを一気に広める必要はありません。段階を踏みながら優先度の高い部署やプロジェクトから実施を始めていくと、従業員が効果を体感しやすくなります。

実際に実施した環境で働いてみてどういう効果を実感したか、改善点はないかなどの意見も集めておくと、社内に取り組みを広げていく際の不満が発生しにくくなります。局所的な導入により効果が社内に行き渡れば、デジタル形式のデータを扱う業務が浸透しやすくなり、導入に消極的な従業員も受け入れやすくなるでしょう。

視認性・操作性の高いデバイスや、ペーパーレス化を助けるツールの導入もおすすめ

導入後に書類を確認するときは、データの状態で閲覧することになります。その際、従業員が仕事しやすいように簡単に書類を確認したり、不慣れな人でも業務に取り組めたりするようなツール・デバイスを準備しておくとよいでしょう。

例えば、デジタル化した書類を確認する際は、携帯端末があるといつでもどこでも資料を確認できるため便利です。パソコンでも閲覧できますが、持ち運びやすさや利用するハードルの低さを考えると、タブレットの方が多くの人にとって使いやすいでしょう。また、タブレットは表示画面が大きいため視認性に優れており、書類に書かれている内容が見やすいというメリットがあります。

そのほかには、ITに不慣れな人が働きやすい環境を作るため、クラウドストレージや紙書類を使わない会議システムの使用も検討してみましょう。多くの人が働きやすいかどうかを考えることによって、徐々に紙をなくしていこうという意識を社内に広げやすくなります。

【事例①】ペーパーレス化が海外展開の後押しにも(アサヒグループホールディングス)

一つ目の成功事例としてアサヒグループホールディングス株式会社の導入例を紹介します。この企業は資源の節約、会議の活性化、事務局の負荷の低減、情報漏洩リスクの軽減を課題としており、解決法としてデジタル形式のデータを活用する会議システムを導入しました。

導入されたのは、役員会議システムの「ConforMeeting/e」です。紙資料に近い操作性をしており、スタイラスペンで表示した資料に書き込むといった使い方が可能です。さらにiPadを社外用資料閲覧ツールとして使用しており、会議資料をむやみに端末内へ保存しない仕様がセキュリティ的に安心できると評価されています。

導入の成果としては、まず事務局の負担が大幅に軽減した点が挙げられています。旧来の業務では、週に1回開かれる役員会議のために各部門で作成した資料を事務局がまとめ、30部印刷する作業がありました。

しかし、紙資料を使わなくなってからは大幅な用紙の削減に成功しています。また、資料をまとめる作業が不要になったため、事務局の印刷作業や会議の片付けの負担も低減しました。

新システムの導入でモニターに資料を表示するようになった結果、資料に重要な部分があれば参加者全員がモニターに注目するだけで内容を把握できるようになっています。また、結果的に会議の発言者の内容に集中しやすくなるという効果もありました。

他にも、資料をデジタル化すればどこからでも閲覧できるため、他府県や海外の社員との会議も行いやすくなります。アサヒグループホールディングスの事例では、紙の使用を減らしたことにより物品・人的コストが削減され、会議が活発化するという効果が現れました。

【事例②】ノンペーパー推進活動で「働きやすい職場環境」を実現(野村総合研究所)

二つ目の成功事例として、野村総合研究所の導入例を紹介します。この企業では、1980年代の頃から紙の使いすぎを課題として捉えていました。

オフィスの机に紙の資料の山ができるのは当たり前のことで、コストや管理意識に目を向けている人はほとんどいませんでした。また、会議資料の作成のために大量の用紙とプリンター、複写機が必要だったため、当時は置ける限り大量の機械を購入し、社内に配置していたようです。

早い段階でペーパーレス化に取り組んでいる企業でも、ただ電子化して紙を減らせば上手くいくというものでもなく、その過程で様々な困難に直面しています。紙を多用する環境を変えるためにヒト・モノ・オフィスという労働環境そのものの見直しや、働き方改革が行われました。

そして、スマートフォンが世間に普及しはじめた頃から会議システムも登場するようになり、企業にとってペーパーレス化を推進する上での重要なツールとして認知されています。野村総合研究所でもグループ企業で開発した「モバイル会議」を使用し、ペーパーレス化を社内で進めました。結果、年間8万枚近く消費していた用紙の節約や資料を作成する事務局の負担軽減、セキュリティ強化など様々な効果を得ています。

できるところからペーパーレス化を実現していこう

ペーパーレス化とは、紙資料を可能な限りデジタル化することです。業務の効率化、コストの削減、事務業務など人的負担の軽減、省資源化などを目的に実施する企業が多くみられます。

ただし、効果を実感するには従業員のITリテラシーの高さが求められるため、企業側としても施策を成功させるためにITリテラシーの教育を従業員に行う必要があります。また、導入には端末などを用意する必要がある、まとまった費用がかかるなどの注意点がありますが、導入に成功すれば大きなメリットを得ることができるでしょう。