新人研修も可能?リモート研修を成功へ導く、5つのコツとアイデア

テレワーク,働き方

新型コロナウイルスの感染拡大により、リモート研修を導入する企業が増えてきています。しかし、適したツールや具体的なやり方がわからないという方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、リモート研修におすすめのツールや具体的な方法をご紹介します。

いま増加中の「リモート研修」とは?オンラインでできる研修・できない研修

そもそもリモート研修とは、オンライン上で新入社員や営業、マネジメント研修などの社内研修を行うことを指します。社内に集まって行う集合研修とは異なり、オンラインで行うのが特徴です。ここではまず、リモート研修が増加している背景やリモート研修でできる内容について紹介します。

テレワークの拡大により、研修もオンラインでの実施が増加

リモート研修は、2019年の新型コロナウイルスの拡大により、急速に広まりを見せています。株式会社デジタル・ナレッジが運営するeラーニング戦略研究所が2020年9月に行った「オンライン研修の実施状況についてのアンケート調査」によると、2020年2月以降にリモート研修を導入した企業が6割以上にのぼります。

特に2020年3~5月に導入を決めた企業が5割以上を占めており、緊急事態宣言の発令とともに導入を開始した
ことが伺えます。また、このアンケートでは新人研修を中心に、全社員向けや職種別、階級別などのすべての研修がリモートで実施されていることが読み取れます。

別の調査結果も見てみましょう。HR総研が2020年の8月~9月にかけて実施した「人材育成「新入社員研修」に関するアンケート調査(2020年)」では、集合研修とリモート研修がどれくらい増減したかがわかります。

この調査結果によると、新人研修を実施している企業のうち、集合研修を行っている企業は前年から11ポイント減少しました。その一方で、「オンライン講座」や「eラーニング」での新人研修を実施した企業は、19ポイント増加しています。

特に従業員数が1,001名以上の大企業において、リモート研修の実施傾向が強く見られます。しかし、中小企業ではまだ集合研修を実施しているところも多く、リモート研修への対応が遅れていることが伺えます。

このようにリモート研修は、近年導入する企業が増えてきています。今後は新型コロナウイルスの影響だけでなく、ニューノーマルな働き方が求められるという点においても、ますますリモート研修の必要性が高まっていくと想定されます。

リモート研修ではどんな内容が実施できる?

リモートでの研修を行う上で、そもそもオフラインと同じレベルの研修ができるのかどうか、不安に思う方も多いことでしょう。実際に、リモートではどのような研修が行えるのでしょうか?

リモートで行える研修内容の例として、座学や少人数でのディスカッション、ロールプレイングなどが挙げられます。リモート研修といえば、既にある動画などをオンラインで閲覧する「eラーニング」を思い浮かべる方も多いことでしょう。

しかし近年では、「Zoom」をはじめとしたWeb会議システムを用いて、リアルタイム研修を行う場面も増えてきています。

リアルタイム研修では、eラーニングではできなかった「講師とのリアルタイムなコミュニケーション」や「受講者同士でのグループディスカッション」が行えるため、密度の高い研修が実施できます。

また、研修の様子を録画で残すことも可能なため、ロールプレイングなど、後から見返したい研修とも相性がよいのが特徴です。

このように、リモートであってもツールを活用してさまざまな研修を行えます。ただし、リモートという特性上、実際に物を使って何かを作成するワークや、身体を使ったワークなどは難しいのが現状です。

また、大人数が一度に会話するのも、リモート研修では難しいでしょう。これらの研修は、リモートの特性に合うように、代替案を検討する必要があります。

集合研修にはない、リモート研修のメリット・デメリット

上記で説明した通り、リモート研修では実施が難しい内容もありますが、その一方でリモート研修にしかないメリットもあります。ここでは、リモート研修におけるメリットとデメリットを確認してみましょう。

リモート研修のメリット

ニューノーマルな働き方に対応でき、新入社員など受講者の安全性も高まる

時間や場所にとらわれないニューノーマルな働き方として、すでにテレワークを導入していたり、導入を検討したりしている企業も多いことでしょう。その場合でも、リモート研修なら無理なく行えます。

また、リモート研修は人が集まる集合研修よりも感染症のリスクが抑えられます。受講者の安全を確保するためにも積極的にリモート研修を取り入れましょう。また、万一社内で感染症が広まると、業務停止となる恐れがあるため、感染症対策を行うことは会社のためにもなります。

会場費や交通費などのコストを削減できる

通常、集合研修を行うには会場費や交通費が必要です。受講者が遠方から来る場合は、宿泊費なども必要になるでしょう。しかし、リモート研修であれば、インターネット環境さえあればどこでも研修を受けられるため、これらのコストを削減できます。

また、集合研修では支店ごとに研修が行われることも多く、研修内容やその充実度にバラつきが出る恐れもあります。しかしリモート研修なら、複数の支社が同時に研修を受けられるため、全員が同じクオリティの研修を受けられます。

研修に対する受講者の参加意欲を高められる

リモート研修では、自宅で研修を受けられるため、受講者の研修に対する意欲が下がるのではないかと気になる方もいるでしょう。しかしWeb会議システムでは、一人ひとりの顔が画面に映し出されるため、たとえリモートであっても、緊張感を持って研修に臨めます。

カメラはON・OFFどちらにも設定できますが、参加意欲や当事者意識を高めるためにも、カメラをONにして参加してもらうようにしましょう。また、なるべく座学ではなく、受講者参加型の研修にすることが大事です。最低1回は発言の機会を与えるなど、工夫した研修にしましょう。

リモート研修のデメリット

一方で「参加者の集中力の維持」や「リモートに適した研修内容の検討」が課題に

上記に挙げたようなメリットがある一方で、リモート研修にはデメリットといえる点もあります。たとえば、集中力の維持が難しい点です。

リモート研修では、画面越しで相手の話を聞いて意図を掴んだり、相手に伝わるようにうまく発言しなければならなかったりと、集中力が必要です。そのため、集合研修よりも緊張や疲労を感じやすいとされています。

そこで、こまめに休憩を取ったり、グループディスカッションの時間を取ったりと集中力が続くような研修内容を考えましょう。休憩は1時間に1回は取るとよいとされています。

また、これまで集合研修で行っていたものを、そのままリモート研修にしてもうまくいかないことがあります。たとえばテキストの配布が必要な研修は、配布に手間とコストがかかります。また、参加者同士が気軽なコミュニケーションを取りづらいのも、リモートワークの課題のひとつです。

そこで、オンラインツールを利用するなど、リモート研修に合わせて研修方法を見直しましょう。リモート研修の中でも、eラーニングとWeb会議システムを分けて活用するのもひとつの手です。

何が必要?リモート研修導入のための準備方法

リモート研修を円滑に進行させるには、事前にリモート環境の整備やトラブルへの対策を練っておきましょう。ここでは、必ず行うべき2つの準備とその方法を紹介します。

リモート環境の整備

まず、リモート研修においては、受講者の置かれている環境が一律ではありません。容量制限のないインターネット環境や、カメラ・マイクを内蔵したスマホ/タブレットを受講者側が準備できているかを確認しましょう。

リモート研修に用いるビデオ通話は、常にインターネットにつながった状態で行われるため、数時間であっても多くの通信容量を消費します。少ない容量では、研修中に通信制限を受ける恐れがあり、滞りなく研修を進めることができません。

カメラ・マイクつきのデバイスも重要です。受講者のデバイスにカメラがなくても研修を進めることはできますが、講師側から受講者の顔が確認できず、理解度が確認できません。また、マイクが備わっていないと質問を受けられず、受講者が常に受け身になるため集中力の低下が懸念されます。

これらを踏まえて、受講者のリモート環境が整っていない場合、モバイルWi-Fiルーターや各種デバイスの貸し出しをしたり、回線費用・デバイス購入費用の補助をしたりしましょう。研修前にはデバイスが1人1台行き渡っているか確認し、足りなければ追加で貸与するなどの対応を行います。

研修内容の最適化

次に、リモート研修に特化した内容を考え、研修担当者もそれに合わせてスキルアップしましょう。集合研修とは求められるスキルが異なります。

対面ではないことから、受講者の集中力が途切れやすくなったり、複数人が同時に話してしまい聞き取りにくくなったりすることが考えられます。座学形式・動画形式の研修や大人数でのディスカッションは控えましょう。

集中力を持続させるため、適度な休憩や質問タイムを設けるなど、コンテンツへの工夫が求められます。ディスカッションを行う場合は、Web会議ツールのグループ機能を用いるなど、少人数にしてから実施しましょう。

また、オンライン研修ではトラブルがつきものです。タイムラグやカメラ・マイクの不具合、指定のURLへアクセスできない、画面のフリーズなど、事前に考えられるトラブルには対策を立てておきましょう。カメラやマイクなどのツールが正常に作動するか、正しくURLが発行できているかについては、リハーサルで確認します。

ツールを上手に活用!リモート研修を成功させるための5つのコツとアイデア

集合研修では無理なく行える内容でも、リモート研修では困難なこともあります。そんなときには、Web会議ツールの機能を存分に活用して、リモート研修を実施しましょう。ここでは、採用が容易で、なおかつ効果の高い5つのコツとアイデアを紹介します。

1.講師・受講者間でコミュニケーションのルールを決めておく

研修は講師のペースで進行するだけでなく、ときどきは受講者の様子をうかがって理解度を確かめます。しかしリモート研修では、画面上に複数の受講者が表示される都合上、対面であれば気づける表情や態度の変化がわかりにくいと言えます。

受講者がどの程度内容を理解できているか把握するためにも、コミュニケーションのルールを決めておきましょう。例えば、「質問があるときはカメラに向かって手をかざす」「話が理解できないときは手で×マークを作る」など、ジェスチャーを用いるのがおすすめです。

また、普段より大きめのリアクションを取ることも重要です。講師・受講者ともに大げさにうなずいたり、声の大きさを意識したりしましょう。受講者の数が多くなるほど、こういったルールの有無によって進行のしやすさに違いが出ます。

2.簡単な質問や感想などにはチャット機能を用いる

大人数のリモート研修では、受講者が自由に発言すると聞き取りにくく、本題も進みません。簡単な質問や感想はチャット機能を用いるとよいでしょう。ZoomなどのWeb会議システムには、チャット機能がついていることがほとんどです。

講師が適宜質問に答えたり、感想に反応したりしながら講義を進めることで、一体感が生まれるとともに集中力の持続にもつながります。またチャットにすることで、対面での発言が苦手な人でも気軽に意見が出しやすくなります。

3.Googleドライブなどのクラウドサービスは資料配布に便利

研修をスムーズに進めるために資料を配布する必要があるのは、集合研修でもリモート研修でも同じです。対面では直接配布できる資料ですが、リモート研修では資料の配布方法も考えなければなりません。そこで有用なのが、クラウドサービスです。

研修中の決められたタイミングで資料を配布したい場合も、あらかじめクラウドのファイル共有サービスへデータを格納しておけば、URLを提示するだけで受講者へファイルを共有できます。印刷の手間がかからない点もメリットです。

4.大人数のリモート研修におけるグループワークでは、Zoomの「ブレイクアウトセッション機能」を活用

集合研修では4人1組でグループワークを行うことがよくありますが、従来のリモート研修ではこのようなグループ分けが困難でした。それを可能にするのが、「ブレイクアウトセッション」です。この機能では、オンライン上で4人組や2人組を瞬時に作れます。

ブレイクアウトセッション機能を活用したおすすめのグループワークは、「リアルな電話対応ロールプレイ」です。従来、集合研修では対面でありながら、見えないものとして電話対応研修を行っていました。一方、リモート研修ではカメラをオフにすることで、本番さながらのロールプレイが可能です。

また、スペースや時間の都合から、集合研修では何度も行えなかったペアの切り替えやグループの再編成も、この機能を使えば容易です。「投票機能」によって優秀者を決めることもできるので、ぜひ利用してみましょう。

5.トラブル発生時の連絡先はあらかじめ周知しておく

ここまで紹介してきたような準備を徹底しても、当日になって緊急事態が起こることは多々あります。例えば、カメラ・マイクのフリーズや通信が不安定になるなどです。こうした小さな不具合に講師が対応できないと、研修がなかなか進まなくなってしまいます。

当日のトラブルに備えて、講師とは別にサポート役の担当者も決めておきましょう。また、どうしても復旧しない場合は、研修を中断する必要が生じます。このときトラブルの発生した受講者が普及しない旨を連絡できるよう、緊急時用の連絡先も周知しておくべきです。

また、上記のようなトラブルは、数日にわたる研修では何度か起こるかもしれません。そのたびに個別対応していたのでは、サポート担当者も大変です。そこで、よくある質問やトラブルの例は、タスクなどにQ&Aとしてまとめておくという工夫も有効です。

新時代の働き方に合わせて、新人研修もリモートで行うのは大いに合理的です。しかし、これまでと異なる研修方法を実施する以上、事前の準備を徹底することが求められます。受講環境の整備や研修内容の見直しなど、気になる点は積極的に改善しましょう。

会社にあった教育制度を取り入れよう

リモート研修は、感染症拡大の防止やニューノーマルな働き方の促進のため、今後もさらに増加するといえます。まだ取り入れていないなら、ぜひ積極的にリモート研修を取り入れましょう。

リモート研修導入の際は、ネットワーク環境の構築やデバイスの整理、研修内容の見直しを行いましょう。また、チャット機能やクラウドサービスなどを活用することも大事です。