コロナの影響でワークスタイルが大きく変わる中、サテライトオフィスという言葉を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。一方で言葉は知っているが利用したことはない、という方も多いと思います。この記事ではサテライトオフィスとは何か、そのメリットをご紹介します。
支社とは違う?今注目の「サテライトオフィス」の定義とは
総務省によると、「サテライトオフィスとは、企業または団体の本拠から離れた所に設置されたオフィスのこと」とあります。まさしく会社の周りにあるサテライト(衛星)ということです。
支社と似ているようにも思われる方も多いかも知れませんが、一般的には支社よりも小規模であり、事業拠点というよりは従業員に通勤しやすい場所につくられたオフィスのことを指します。
また、支社のような事業拠点で働く場合、会社から任命され、その拠点に配属されることになりますが、サテライトオフィスは従業員が自らの意思で働く場所を選択できる、といった点でも違いがあります。そのため、所属は本社でも実際に働く場所はサテライトオフィス、といったこともあり得ます。
本社や支社といった事業拠点からは物理的に離れているため、情報通信技術を(ICT)の活用を前提としているケースが多く、テレワークをする際にサテライトオフィスを利用する人もいます。
企業がサテライトオフィスを設置する主なメリット
サテライトオフィスとは従業員に通勤しやすい場所につくられたオフィスのことを指す、と説明しました。働く側にはありがたいですが、企業にとって設置するメリットはなんでしょうか。理由や目的はもちろんそれぞれありますが、大きく以下の2つが挙げられます。
移動時間の短縮によるコストカットと生産性の向上が期待できる
サテライトオフィスは、基本的に従業員が通勤しやすい場所につくられますが、このことにより、まずコストカットが期待できます。サテライトオフィスの設置に伴い費用は発生しますが、従業員それぞれにかかる交通費用の削減を期待できます。また、本社や支社といった事業拠点は、一般的に都市中心部に一定の規模をもって設置されることが多く、固定費としては小さくありません。この本社や支社を縮小し、小規模なサテライトへ分散すれば全体としてコストが下がる可能性があります。
次に生産性の向上についてですが、例えば東京都心の本社に出勤するケースを考えると、郊外に住む従業員は満員電車に揺られて通勤に60分程度かかることも珍しくありません。その分早く起きなければなりませんし、立ちっぱなしで朝から心身ともに疲れてしまうことも多々あるでしょう。慣れていると気づきませんが、みなさんの普段のパフォーマンスは、もしかしたら出勤によってかなり制約されているのかもしれません。
サテライトオフィスならこういった悩みを解消、あるいは軽減してくれる可能性があります。本社などへ長時間の出勤をしている場合と、通いやすいサテライトオフィスに勤務する場合では、生産性についても違いが出るでしょう。サテライトオフィスに勤務することで、朝から疲れを感じることなく、すっきりとした気分で仕事に取り組める人も多いかもしれません。またオフィスが近いことで通勤時間を削減できれば、自分の時間が増えてワークライフバランスの向上にも繋がります。
都市や地方など、設置場所によっても様々な効果を得られる
サテライトオフィスは従業員が通勤しやすい場所につくられますが、その場所はさまざまです。その場所によって次の3つに分類することが出来ます。
都市型:都市部に本社や拠点があり、同じ都市部にサテライトオフィスがあるものです。同じ都市部に必要なのか、と思われるかもしれませんが、例えば外回りに出た営業マンが最寄りのサテライトオフィスで資料作成や報告業務を行い、直帰できるといったメリットがあります
地方型:都市部に本社や拠点があり、地方にサテライトオフィスがあるものです。現在、総務省や地方自治体でも積極的に推進しており、地方活性化や地方人材の確保といった効果が期待されています。また災害の多い日本では、どこでいつ災害が起こるかわかりません。自然災害以外にもさまざまな事業継続リスクはあり、一拠点にすべての資源を投入することはリスクを伴います。地方にサテライトオフィスを置くことで、低コストで事業継続リスク管理を行うことが可能となり、BCP対策としても期待されています。
郊外型:郊外の住宅街付近にサテライトオフィスがあるものです。これは職住環境型とも呼ばれ、通勤時間を削減し、従業員の育児や介護と仕事の実現を目的に置かれるものです。育児や介護を理由に優秀な人材が離職するケースはままあります。従業員のワークライフバランスの充実をサポートすることで、優秀な人材の離職を抑え、生産性向上を図ることができます。
企業負担を軽減!サテライトオフィスの導入に使える制度
サテライトオフィスの導入は総務省や地方自治体が積極的に推進しており、誘致活動も行われています。補助制度も各種用意されており、企業負担を抑えた上でサテライトオフィスの導入を行うことも可能となります。ぜひご参考にしてください。
本格導入前に、地方での勤務を体験できる「お試しサテライトオフィス」。
「お試しサテライトオフィス」とは総務省が行っているプロジェクトであり、サテライトオフィス開設を検討している企業に対し、お試し勤務の募集を行っています。
具体的には、サテライトオフィスの開設を検討している企業に対し、総務省が選定した地方自治体がオフィスを提供するものです。企業にとっては、地方のサテライトオフィスにおいて、実際にどのように業務を行うことができるかを試すよい機会となるでしょう
テレワークを活用して都市部から地方への人や仕事の流れを作る、といった点で同様のプロジェクトに「ふるさとテレワーク」がありました。(平成30年度で終了)こちらはテレワーク環境整備費用の一部補助など実際に企業の移転を推進するためのものでしたが、「お試しサテライトオフィス」は実際に地方のサテライトオフィスで働いてもらうことで、企業の地方サテライトオフィス開設につなげていこうとするものです。どんな業務体制になるかなどを試すことができるので、サテライトオフィス導入のハードルが下がったと言えるでしょう。
自治体独自の補助金制度も要チェック
サテライトオフィスへの支援は地方自治体からも行われています。
例えば奈良市の場合、サテライトオフィス設置推進補助金が創設されており、以下の条件すべてを満たす企業へ、500万円を上限に補助対象経費の2分の1が支給されます。
・奈良県内に本社及び事業所がない
・3年以上継続して事業を行っており、従業員を5人以上雇用している
・IT・クリエイティブ企業(情報通信業、デザイン業、研究所他)
足利市の場合、 サテライトオフィス整備事業費補助金があります。以下の条件を満たす企業に対し、200万円を上限に補助対象経費の2分の1が支給されます。
・3年以上継続してサテライトオフィスとして維持、運営される見込みがあること
・改修工事完了後、取組み内容の公表に同意すること
・その他の法令に違反のないこと
・市税に滞納がないこと
サテライトオフィスを設置したいと考えている自治体の制度、支給条件や補助対象となる経費の説明などについては、各自治体のHPで確認をするようにしましょう。
サテライトオフィスを活用しよう
コロナの影響でテレワークが浸透し、サテラライトオフィスの活用も注目されるようになりました。ここでご紹介した通り、様々なメリットがありますし、国や地方自治体も積極的に推進しています。企業担当者の方は、本記事を参考に、サテライトオフィス導入を検討されてみてはいかがでしょうか。